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ダルバートは嫌いということにしておこう

私はネパール一付き合いが悪い日本人という自信があります。

ちょっと親しくなるとよく家での食事に招待されるのですが、まず行かない。
たとえば、お客様から「ネパールのお宅に招待されたけど、言葉も出来ないので一緒に来てほしい!」というリクエストが来たとか、どうしても断れなさそうな知人の結婚式やら成人式とか、それでも後者には「気が向けば」という条件が付くので、私のこれまでのネパールお呼ばれ参加回数は、ひょっとしたらひと桁にとどまるかもしれません。



ところが先日、なりゆきと私のちょっとした打算があって、久々にディナーに呼ばれていくことになりました。

呼んでくださった人は知り合ったばかりなのですが、その短い間に聞いた話から察するにお金持ちらしい。もともと王族と縁つながりで、という由緒正しき系ではなく、おそらく彼自身の努力で今の財の殆どをなしたのだろうな、というタイプ。タメルに小さなアパートタイプのホテルを持っているのでその一室を使い、総勢10人ほどのディナーでした。

みんなホスト同様にやり手のビジネスマン風な人が集まる中、話題はやはりお金と商売なわけですが、とりあえず私以外にもいた外国人と、話すより食べることに集中するフリ。だって、まだバブルが消えないネパールで景気よくやってる人たちに私から言えることなんて何にもありませんから。
ホストの奥さんも料理を作ってくれたそうなので、奥さん相手に料理の話をしていれば充分楽しい時間が過ごせます。



デザートになった頃のこと。
ホストが少し離れて座っていた奥さんとネパール人女性のゲストに何か小さいものを投げて渡しました。
それを受け取ってしげしげと眺めたゲストが一言、「これ本物のダイヤよ」と言ってその指輪をホストに返しました。ホストは指輪を指に戻し、同じ腕のブレスレットを照れくさそうにさすりながら、

「僕はこういうのするのっていやなんだけどねぇ。カトマンズもいろいろあるでしょ。でも、家内が付けろって」

すると周りのネパール人のゲストたちが、

「でも、あなたは充分働いたしね。そのくらいは持ってもいいんじゃないの?」

「そうそう。そろそろ働くばかりじゃなくて、自分に使ってもいいよ」


そして、「ダイヤ鑑定した女性」が、

「そうよ~。もう、(それなりの財産ができたのだから)、(美味しいものを)食べなきゃいけないし、(良いものを)着なきゃならないし、楽しまなきゃいけないし、」



「周りに見せなきゃいけないわよね」




えーっ??何を??誰に?

お金が有っても、それを他人に見せびらかすのは美しくなく、むしろ品のない行為だという価値観の日本人の私にとっては、かなり驚きの発言でした。もちろん私に向かって言った言葉でなかったからまだ良かったけど、目を見てこんなこと言われたら、つましい暮らしをする庶民の私は固まってしまったかも。



その女性は、色白でノーブルな顔立ち、風船のような体に、指の幅の1.5倍はありそうな大きな石のリングをはめた、30m先からでもカーストが高く裕福だとわかる人でした。そう、あなたは実行してるよね。



でも、それが社会的にも経済的にも上の階層に生まれて、そのように育てられた人の存在を保証する意義なのかもしれません。上か下かなんて相対的なグループ分けなのですから、下には下にいてもらわないと、上の人は優位にいられないのは誰でもわかること。

人の権利は平等だと思う。が、世の中の利益はみんなに公平になんて回らないという事実をしゃあしゃあと言って、そしてやってのける社会を後進国と呼ぶのは、ただの世間知らずじゃないんだろうか。



とにかく、つんと顎を上げて「ワタシはこんなにお金持ちよ。アナタは?」を堂々と体現している人の隣に座って、圧倒されてしまったのは間違いありません。これまで会った若いモンらは、「宗教もカーストも関係ないさ!みんな平等だよ」とのたまい、共産主義かフラワーチルドレンか、どっちにしてもうそくさいんだよ、思ったものだけど、それに比べればあっぱれの一言です。でも、どの国だってそれが人の本音で、それを前面に出して回る世界もあるのではないでしょうか。



などと、もぞもぞ考えながら食べたデザートのフルーツヨーグルトは、生ぬるい上に甘過ぎて美味しくありませんでした。
私が目論んでいたしょぼい打算は無事目的を達成し、ダイエット中にもかかわらず礼儀上お変わりまでした高カロリーダルバート+ぬるいコーラのわんこそば状態のおかげで体重も増え、「金輪際ネパールのお呼ばれには行かない」と改めて思ったワタシは、やっぱり謙譲が美徳の日本人です。
by noz-tr | 2013-06-28 21:23
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